子ども/総合的な学習の授業

臨床美術の実際3:子ども/総合的な学習の授業

子どもを対象とした臨床美術では、一般の子どもを対象とした、臨床美術によるアート教室や幼稚園・保育園での実施、多動症や不登校の子どもに対するマンツーマン・クラスなどがあります。
東北福祉大学 感性福祉研究所芸術療法班では、PTSDやいわゆるゲーム脳など、発達の気になる子どもに対する臨床美術研究も行われました。

一方、小・中学校の福祉教育として総合的な学習の時間の授業にも導入されています。
埼玉県春日部市立幸松小学校では、平成17年度に当協会との協働により、第4学年の児童を「小学生臨床美術サポーター」に育成し、地域の高齢者と臨床美術を通じてコミュニケーションする「アートでおじいちゃん、おばあちゃんと仲良くなろう」という授業を30授業時間にわたって行いました。 授業を受けた子どもたちの感想と、同校の元山清博校長先生(当時)のコメントを紹介します。

子どもたちの感想:地域高齢者との制作を終えて

「お年よりの人は、喜んでくれてよかったです。それに、(作品を)一生かざると言ってくれて、うれしかったです。」

「おばあちゃんが、楽しいねと言ってくれました。これなら毎日きたいな、とも言っていました。とてもうれしかったです。」

「ぼくたちが先生になって、きんちょうしながらもお年よりに、がんばってカボチャ(の新聞工作)の作り方を教えました。自分の最高をはっきできてよかったです。また先生になってみたいです。」

「最初はきんちょうしたけど、後からどんどん楽しくなりました。おばあちゃん達もこせい的なカボチャを作っていました。本物みたいなやつもあって、おしゃれしているみたいなのも、長いカボチャもありました。このカボチャ作りを通しておばあちゃん達と仲良くなれました。」

「ぼくが(メインで指導する)たんとうなのでこわかったです。でもじょうずに教えられてよかったです。おばあちゃん達はなめらかにかいていました。」

「お年よりにあわせてかいて教えられました。本当によかったです。できたらまた何かかきたいです。」

「記録カード」より抜粋

校長先生のコメント(談)

それまで第4学年で取り組んできた総合的な学習の時間は、地域に暮らす様々な人とのふれあい体験として成果をあげていましたが、いくつかの課題も感じていました。
民間との協働プロジェクトを通して、「受身の総合的な学習の時間」から「子ども達が主体的に体験的・問題解決的学習ができる福祉学習の時間」へ転換を図りたい狙いがありました。
協働する団体の選定にあたっては、「学校にはない視点」「教員では考えつかない学習活動」「学術的な裏づけと確かな実践を蓄積した専門家集団との協働」を視点としていました。
結果として、日本臨床美術協会との協働が、児童達はもちろん、職員にも、従来の学校の枠の中では得られない豊かな学びの場を与えてくれると判断しました。

実際に授業が始まってみると、臨床美術基礎学習では、講師(臨床美術士)の声かけが自信につながり、個性的な作品を完成させることが出来ていました。
殊に、普段の学習では理解できず困難に直面すると、そこから先に進めない児童が迷わず作業を進められるようになったり、日頃無気力で図工の作品などはなかなか作成しなかった児童が全く別人のように自信をもって堂々と制作する姿などは、多くの教師にとって驚きの的でした。

最終段階の高齢者との制作活動では、自分の感じたことを素直に言葉にでき、しかも相手(高齢者)の感じ方に共感している様子が見えました。
参加した高齢者からは、「また子どもたちと一緒にものを作る時間を設けてほしい」「家に帰ったら社会人の息子が『母さん、素晴らしい作品じゃないか!』といって立派な額を買ってくれてうれしかった」「子どもたちの説明がたのしくてよかった」「一人暮らしをしているが、久しぶりにとても楽しい時間がもててうれしかった」等の感想を多く頂戴しました。

今回の協働プロジェクトでは、学校と日本臨床美術協会との間で基本的理念の共通理解をすすめ、共同で指導計画作成した結果、各段階で協働がスムースに進行し、一人一人の児童の成長が確実にみられました。
それは保護者や地域からの賞賛が得られたことからも明らかです。

平成18年度は、子どもの変容を促す確かな手立てと評価方法の確立を、決め細やかな記録と連帯を武器に蓄積し、2年目の研究を充実させていく計画です。

埼玉県春日部市立幸松小学校 元山清博校長(当時)